こちら、毎日必ず行くバルのおじさん。
スタジオのヒト達と5,6人、多いときは10人程で一緒に行って、大体誰が何を頼むか、このおじさんは把握しているのですが、
テキパキと、あっという間に全員分、美味しいエスプレッソを入れてくれます。
それで、私は、おじさんがマシーンでエスプレッソを作る様子を、じっと観察しておりました。
小さな小さなコーヒーカップは、大柄なイタリア人の手の中にいますと、さらに小さく可愛らしく感じます。
すばやく専用の機械にコーヒーの粉を入れます。直径3~4センチ、深さ1センチほど、底がプツプツと穴がある丸い入れ物に入れます。(モカで作るときもおんなじ)
じっと見ていて気が付いたのですが、粉を入れたら、ギュッと強く上から蓋のような物で押し付けていました。
周りのイタリア人に聞いたのですが、この、ギュッっと強く押して圧力をかけることが重要なんですって。
瞬間的に、シューッっと沸騰したお湯が、この粉の入れ物を通って、濃いコーヒーが出来上がるので、粉の量と入れ方が味と風味を左右するのですって。
出来上がったものを、小さなカップに入れて、ソーサーの上にスプーンと共に置きます。
1杯ずつ同じことを繰り返しますが、おじさん、本当に早い!
手を動かしながら、口も動かしております。お客様には必ず「チャオ!」、顔見知りには「チャオ、カーラ!」+その他のお喋り。
新たな注文も同時に聞くので耳も働いています。
いつも思うのですが、こういう、職人技の動きって、凄いなぁと感心してしまいます。
話は飛びますが、以前、部屋の大きな窓ガラスが強風で派手に割れてしまって、ガラス屋さんが直しに来ました。
2人の大柄なイタリア人でしたが、事前に窓枠の大きさとガラスの厚みは伝えてあったものの、
2mほどあるガラスを、狭いところで、あっという間に窓枠に設置して直していました。
(切ったり、貼ったり、色々としていました)
そばで見ていた私と大家さんは、ただただ、本当に凄い・・・と感心するばかり。
日本で設計のお仕事をしていたときも、図面化された内容を、実際に組み立ててゆく現場の人たちを見ていて、本当に素晴らしいわと、いつも思っておりました。
壁を塗るヒト、壁紙を貼るヒト、カーペットを切るヒト・・・限られた時間の中で、1ミリのミスも許されない世界。
大抵、図面と実際の建屋寸法には誤差があるので、それも上手に美しく対応することも求められます。
パリやミラノのメトロの大きな広告、たまに張り替えている現場に遭遇しますが、インテリアほどの美しさは求められないものの、職人さんはあっさりと素早く張り替えます。
パリのメトロは、壁が曲面の駅もあり、とてもむつかしそう。
私はすっかり時間を忘れて、じっと観察してしまうことがよくありました。
家のそばの庭の木を刈る庭師、引越し業者の素早い梱包技etc・・・
絵画や彫刻のように、いつまでもずっと残ってゆくものではなくて、常に消費されてゆくもの・・・
当たり前のように、日常の中で何気なく通り過ぎてゆくところに、心を動かす素晴らしい職人技が生き生きと沢山あって、
日常の営みに寄り添っています。
ふと現場に出会いますと、いつも尊敬して見つめてしまいます。
そんなことをぼんやり思い出していたら、おじさんの美味しそうなマッキアートの出来上がり☆
自宅でモカでエスプレッソを入れるときは、粉を入れたらギュッと押すようにしてみました。
教えていただいた、小さな、素敵なこと。