Archaic chimneys

白い空気の、冬の香りのなか、いかがお過ごしでしょうか。

ミラノはすっかり凍えるような寒い日々が続いております。

快晴続きの旅を終えた後は、ずっと曇りor雨模様。


ベランダから見える、沢山の赤色の屋根には、

小さくて、とても古い煙突が沢山あって、

灰色に覆われた風景の中へ、

白い煙がもくもくと消えてゆきます。


archaic chimneys.


昔、美大生になって間もない夏休みに、友人と、

奥多摩の深い森の中へ、小さな小屋で数日間、

バーベキューをするでもなく、キャンプを楽しむでもなく、

自然の中で、どの様な創作が出来るのかを探しにゆく旅を

しました。

小屋の管理人さんからは、基本キャンプが目的の若者が集う日常で、

私たちの事を、とても不思議な目で見つめていた事を

よく覚えています。



その時の旅のタイトルが、

archaic chimneys.


いったいどういういきさつで、そう決まったのか、今では謎なのですが、

古い煙突にとても惹かれていたのでしょう。

ふと、ベランダで思い出して、少し可笑しくなったのでした。


緩やかに、白い煙の動く姿が、無意識に、温もりのある家の中の、

時の流れとリンクします。


人々が暮らしている、営みの風景。

どの様なドラマがあるのかしら、と、想像の海は深くなってゆくばかり。


どの様な風景や、香りや、メロディが、心を動かしますか。

人それぞれ異なると思うと、それだけでドキドキします。

言葉で表現出来るなら、聞いてみたいですね。

そういう会話は、深くなるほど面白いです。


独りでの思考が、ひとり旅のように自由に歩くことが出来るように、

会話も、誰かと旅をするようなもの。

独りでは辿り着けない、新しい世界に辿り着くことがあります。

特にヨーロッパに来てから、強くそう感じるようになりました。


心の深いところから豊かになってゆく旅。


そして、心が豊かになると、自然と右脳が動き出します。


昔読んだ、伊東豊雄氏の書籍の中で、

巨匠アアルトは、右脳が自ら動き出すのを待つために、

右の手にペンを持った時に、彼にとって左の手に持つべきもの、空間を流れるメロディが何なのか、

知っていたと書かれていました。

図面化されてゆく時に、左脳を動かす術もあったそう。


昨年、彼の自邸&彼の設計した住宅を見に行った時に、

素晴らしい空間が生まれる迄の、

心と脳の動きを想像してみました。


完成されたものの中から、原石を探すようなもの。


日々、心が豊かになるように。


お金をかけるような贅沢な事でなくてよいのです、

質素な暮らしの中で、優雅な時間を持つことが大切、と私は思います。

とても贅沢な事なのかもしれないけれど。

古い煙突ひとつから、心を豊かにしてゆくことは、

贅沢な事だと思うからです。


結局、感謝、という一言に戻ってゆくのですね。

様々な思考、想像の旅に出ても、戻ってゆく場所があるという事は、本当に大切ですね。


戻るべき場所へ戻って、心へ刻んでゆきたいと、

強く願います。

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